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第14回:NPO法人Teach For Japan代表理事 松田悠介

教育現場に、もっと社会性と時代性を(1)

 

松田悠介(NPO法人Teach For Japan代表理事)
武藤新二(汐留イノベーションスタジオ ディレクター

 

1989年、あるひとりのアメリカ人大学生が立ち上げた教育系NPOが、いま、全米で大きな話題を呼んでいます。その名はTEACH FOR AMERICA。この活動をかねてから私淑し、2010年9月、遂に東京でTeach For Japan(TFJ)を立ち上げたのが松田悠介さんです。「全米から最優秀の大学生をリクルーティングし、教師として、教育機会に恵まれない子どもたちの元へと派遣する」というTEACH FOR AMERICAの活動が、果たして、日本でどうローカライズされていくのでしょうか。ClipCMを活用した教育プログラムを共同開発しているSISとの今後についても語り合います。

 

『TEACH FOR AMERICAが必要とされる理由。』

 

dialogue_with_sis_vol14_01.jpg武藤 TEACH FOR AMERICA(TFA)を立ち上げたウェンディ・コップさんは、確かプリンストン大学の出身でしたよね。プリンストン大学といえば、村上春樹さんがかつて客員講師をしていた大学としても、知られていますね。

 

松田 そうですね。プリンストン大学はアイビーリーグの1校で、アメリカの大学ランキングでも常にトップを争う非常に優秀なアカデミック・ハブです。そんな環境で、充実した教育を受けてきたウェンディ・コップですが、自分が生まれ育ったすぐ隣の地区では、麻薬や暴力が社会に巣喰っており、学校も、教師不足や授業の質など多くの問題を抱えていることに憤りを感じていました。「同じ子どもなのに、この差は一体何なのか」と。そこで彼女は、そんな困難を抱えている地域に、全米で最も優秀で情熱のある学生をリクルーティングして、教師として送り込む組織をオーガナイズしたんです。それがTFAのはじまりです。必死に営業をして資金を集め、初年度には500人の人材を教育現場へ送り込みました。

 

武藤 ものすごい実現力ですよね。問題意識を持っている人はたくさんいますが、実際に行動に移せないことのほうが圧倒的に多い。行動力と継続力が、時代を突き動かした素晴らしい取り組みだと思います。発足からおよそ20年が過ぎたわけですが、現在はどのように発展してきているのですか?

 

松田 1年間に4500名がリクルーティングされ、2年間教師として働きます。つまり、常時9000人の優秀な学生が所属していることになります。現在アメリカでは、このTFAがファーストキャリアとして非常に注目を集めており、文系の2010年の就職人気ランキングでは、グーグルやアップル、あるいはゴールドマンサックスなどを抑えて1位となりました。実際、アイビーリーグの学生の平均11%がTFAにアプライしているそうで、2015年までに、年間9000名を採用する計画を立てているそうです。

 

武藤 アメリカの場合、日本のように4月1日に一斉に就職したり、終身雇用といった概念はありません。大学を卒業したらまずファーストステップとして、インターンやボランティア活動をするケースが多いですよね。そのニーズを上手くすくい上げた、という側面はあるのでしょうね。

 

松田 TFAでは特に、チームビルディング、組織作り、リーダーシップといったキーワードを大切にしています。元々優秀な学生が、そういった研修を受け、情熱を持って2年間、教育現場に身を置く。そうした人材は、企業にとっても非常に魅力的なわけです。おっしゃる通り、現在はキャリアパスとして非常に機能しており、より優秀な人材が集まるようになってきたそうです。

 

dialogue_with_sis_vol14_02.jpg武藤 キャリアパスのために、教育現場が活用されているのではないかという懸念をされる方もいらっしゃるかと思いますが、やはり、2年間の教師生活を終えると、みんな大企業へとステップアップしていくわけですか?

 

松田 「2年間のプログラムが終わった後に、教育現場に残っていると思いますか?」という質問に対し、YESと答えるのは毎年6~7%です。93%の人は、キャリアパスとして考えているわけです。ところが2年経ってみると、66%が教育関係のフィールドに残るんですよ。教師として残る場合もあれば、教育系のNPOを立ち上げる人もいる。2年間教育の現場に入って、教育を支えていくことが国を支えることだと気がつき、そこに魅力を感じるわけです。

 

武藤 アメリカの場合、優秀な人ほど「国を支えたい」と思いますからね。その意識の差も含め、TFAのシステムをそのまま日本に導入するのはなかなか難しいですよね。特に、学生のレベル、あとは就職システムの違いといった点において、いろいろとご苦労をされていらっしゃるかと思います。次項では、そのあたりのことからお聞きしたいと思います。

 

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<プロフィール>
松田悠介/Yusuke Matsuda(Teach For Japan 代表理事)
日本大学文理学部体育学科卒業後、体育科教諭として都内の中高一貫校に勤務。体育を英語で教えるSports Englishカリキュラムを立案。部活指導では都大会の予選ですら勝つ事ができなかった陸上部を全国大会に導く。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、2008年9月、ハーバード教育大学院修士課程(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、PricewaterhouseCoopersにて人材戦略に従事し、2010年7月に退職。Teach For Japanの創設代表者として現在に至る。

 

>>Teach For Japan
>>Twitter:@matsudaedu

 

武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。

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